旅館のパズルの謎

旅館や温泉ホテルの客室によく置いてある木製の積木みたいな立体パズル。旅館の窓際の空間、あの謎のスペースと言われる広縁(ひろえん)でこのパズルに嵌まった人もいるかもしれません。
旅館と言えばこのパズルというぐらい有名なんですが、いったいこれがなぜ多くの客室で置いてあるのでしょうか?みなさんの長年の疑問に私が終止符を打ちましょう。

このパズルがけっこう面白いのです。形の違う4パーツを組み合わせて指定の図形を作ります。
サービスとして用意されていて自由に遊んでいいのですが、これがちょっとだけやってみるかと手をつけたら最後、夢中になってしまい止まらなくなった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?。
緻密に計算するというよりは発想の転換、頭の柔軟さが求められる感じで、課題の形が出来上がった時には「ヨシ!」と、もの凄い達成感があります。
こういうパズルはシルエットパズルというジャンルになるそうなんですが、ピースを並べてアルファベットのTの字を作ったりすることから、Tパズルとも言われます。4つのピースで構成されたこのパズルの商品名は「THE-T」ザ・ティーと言います。
世界的パズル作家、故・芦ケ原伸之氏(NOB)の作品として、銘木NOBパズルとも呼ばれます。



なぜこのパズルを置いている旅館が多いのか?
旅館やホテルは遊び道具、ゲーム、ホビーをフロントで用意している所は多いです。貸し出し用備品としてホームページに明記していなくても、実は用意はしてあるという物は多いです。
家族や仲間とのコミュニケーションツールとして、暇潰しの目的で準備しています。定番としてはトランプ、UNO(ウノ)、将棋、オセロ、人生ゲームを代表とするボードゲームなどです。
「トランプなんて貸し出しないですよね?」なんてフロントに尋ねると、「ありますよ」なんて拍子抜けに返事が返ってきたりします。
でも、これらの物は予め部屋に設置されてないですよね?なぜこのパズルだけ部屋に用意してあるのでしょう?不思議ですよね?。

例として挙げたホビーと「THE-T」の違いに気付きますか?
そう、みな2人以上の複数人でないと遊べないんです。「THE-T」は一人でも楽しめるんです。一人宿泊であっても、連れが疲れて寝てしまっても、別行動でも、一人でも遊べます。もちろん複数人でもみんなで考えながら遊べます。

そして場所を取らず小さく、ほかの物よりは単価としては安く、万が一持ち去られたとしても被害が少ないです。

さらに、老舗旅館の木造・和風建築とヒノキ等の木製のブロック型パズルとの親和性が高いです。風情・情緒を壊すことがありません。

では、上記それだけが理由?いいえ。
多くの旅館にこのパズルが置いてあるのにはあるカラクリというか、秘密があるのです。



これだけ普及した本当の理由
ホテルや旅館に売店があったりしますでしょ。あれは必ずしも直営ではなくて、別会社が運営していたりします。
そして直営であっても、そこへの販売商品を取り扱い、卸す企業もあります。
かつてそれらの企業が、積極的に営業してこのパズルを売ろうとしたんですね。
その売上を伸ばす方法として、客室への無料サンプルの設置を提案したのです。
その各室分の費用は企業負担。無料でサンプルのパズルを用意してくれる。つまり、旅館は委託販売として請け負うことでリスクを気にしなくて済むわけです。

客室で遊んで気に入った人、夢中になり時間が足りず家でもやりたいという人、そのような人は旅館・ホテルの売店やフロントで購入することが出来るようにします。
そして、これがけっこう売れるらしいのです。
ホテル・旅館もほとんどリスクなく、売れた分のマージンでいくらか儲かるわけですね。それなら置きますよね。

普及の裏にはこうした企業の存在、セールスや営業活動が影響しているのです。

おもてなしのひとつとしてパズルを置いている旅館があり、好評でそれがだんだん業界の中で広がり、サンプルを客室分用意してもらえるならうちもお願いしたい、と多くの旅館が注文先を教えてもらい、真似をするようになっていったかもしれません。
旅館側が全客室分のパズルも購入して部屋に置かなければならないとすると、とても導入には踏み切れないでしょう。

長年の疑問が解けてすっきりしましたでしょうか?。


広縁(ひろえん)について
冒頭で謎の縁側、広縁(ひろえん)の話題を出しましたが、これについても少し解説しておきましょう。
旅館の窓際のあのスペースって廊下みたいじゃないですか?しかも和風なのに必ずイスとテーブルが置いてあるのは不自然です。なぜ?
昔の旅館は大部屋を襖で仕切っただけの構造が多かったのです。そして大部屋を囲うように廊下がありました。
明治時代に入り、西洋人を受け入れるために個室化する必要から、廊下も分断化されてしまいました。
外国人ですから、その廊下の名残に座椅子でなくテーブルとイスを用意したわけです。
「国際観光ホテル整備法」というのが1952年に定められたのですが、イス及びテーブルの備付のある広縁その他の施設があることとされており、なんと広縁が義務付けられていたことに驚かされます。



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