スーパーホテル訴訟で懸念される業界への就職・転職

スーパーホテルと言えば、黄色い看板が目立つ全国チェーンの宿泊特化型のビジネスホテルです。そこそこ格安で快適、店舗数も多いので宿泊したことのある人も多いと思います。
2020年5月28日、支配人と副支配人だった男女が、未払いの残業代など計約6200万円を求めて東京地裁に提訴しました。スーパーホテルの多くが、夫婦・カップルなどの男女2人1組で支配人と副支配人となりホテルを運営する「業務委託契約」で働いています。
つまり、この契約料で一棟まかせるから住み込みで、二人の責任で切り盛りしてくれたまえ!ってことですね。
結局、働いてみたら運営上の裁量権・決定権はないし、働かされ放題の奴隷状態だったということでしょう。

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提訴した支配人・副支配人は「2018年9月19日から2人で年間約1000万円、2年目からは約1200万円、の委託料で業務委託契約を結んだ」ということです。
そんなにもらえるなら悪くない契約じゃないの?と思いますよね?経費のどこまでを本社が負担するのかははっきりしませんが、確認できたものは外部委託の「清掃・リネン」は本社持ち、アルバイト・パートの費用は「部屋数に応じた補助金」を本社が支払うということです。

けれども提訴側は、「アルバイトを雇う人件費なども引かれると、月の手取りは1人あたりわずか10万円程度」だったということです。しかも、「あらゆる業務内容はマニュアルで規定されていて実質の裁量権はなく、深夜の客のトラブルなどにいつでも対応して出動しなければならない事実上24時間業務だった」ということです。
これは元ホテル経験者だった私には分かります。意外にホテルは儲かりませんが手間はかかります。けして大袈裟ではないでしょう。

業務委託契約ってけっこうシビアなんですね。支配人側も納得した上で契約したのでしょうが、苦労は想像を越えていたのでしょう。
私も初めて見てみたのですが、ホームページのQ&Aにこんなふうに書いてありました。

・契約期間中の4年間で子供ができてしまった場合は?
「母体に大きな負担が掛かりますので、残念ながら業務委託契約は解除させていただきます。」

・どちらか片方がだめな場合は、どうなるのですか?
「残念ながらお二人との契約となりますので、契約は解約となります。ただ、短期間の入院などの場合は店舗担当者へご相談ください。」

働くって厳しくて、けっこう世の中こうした条件も驚くに値しないのですね。

私はスーパーホテルを悪として晒し上げ、批判したいが為にこのブログを書いているわけではありません。はっきり言ってしまえば、こんな問題はいくらでもあります。この件はこの件で裁判で決着をつければよいことだと思っています。
それよりも、ホテル業界に限らずどんな業種でも、この「業務委託契約」や「みなし管理者」については積極的に改善すべき事柄だと思うのです。
企業側が責任や人件費を軽くするための「名ばかり個人事業主」としての契約。
現実には決定権や裁量権は無いに等しいのに、「お前は管理者だから責任がある」「管理者だから残業代は払う必要がない」というやり方がまかり通っています。
コンビニをはじめとした「フランチャイズ方式」の本社とオーナーの確執も目立ってきています。
気楽そうに見えるホテル業も白鳥のごとく、水面下では足を高速でバタつかせているという想像をして下さい。どんな仕事もそうだと思いますが、楽そうに見える仕事も実際には忙しいということです。

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ホテル業界、宿泊業に就職・転職を考えている人へ
私は仕事に貴賤はないと思っています。ホテル業界に就職・転職したい。とても興味を持っている、やりがいがありそうに感じる、自分に合っていると思う、と希望するのであればそれは尊重されるべきことと思います。
この記事は2020年6月に書いています。新型コロナ騒動の最中。今後ホテル業界がどうなっていくか?についてははっきりいって予想がつきません。その時の業界の現状をしっかり把握、将来の展望を見据えたうえで判断して下さい。

残念ながら元ホテル業経験者の私は、積極的にこの仕事をおすすめすることは出来ません。理由は世間で言われているとうり、
・給料(年収)が低い
・勤務体系により生活が不規則になる
・長時間労働
・休日数が少ない
・離職率が高い

厚生労働省の統計資料によると、2018年は「宿泊業・飲食サービス業」の離職率が一番高く、26.9%です。
辞める人が多い→人手不足→長時間労働で休み減る→給料増えない→辞める
この悪循環が続きます。
ただし、就職・転職のハードル、難易度は比較的低いと思います。誰でも出来る仕事とは言いませんが、来る者は拒まずって感じかもしれません。どうせすぐ辞めちゃうかもしれないし・・・みたいな。資格も特に必要なく、英語の資格があれば多少有利になる程度です。転職においては未経験者でも特に問題ないと思います。誰もが羨ましがるような尊敬される仕事ではないので、志望動機もなにもないですよね。大卒の新卒で躍起になる職業ではないように思います。嫌なことばかり言って申し訳ありません。
でもこの労働条件の悪さって、あらゆる職種、あらゆる会社で陥ってたりしませんか?だから宿泊業に限った特徴でもないかもしれませんし、ホテルのランクでも違うのかもしれません。スーパーホテルがブラック企業というわけではなくて、業界全体がブラック体質と言うべきでしょう。もちろん経営者によっては、そうでない働き甲斐のあるすばらしい会社もあることでしょう。
この裁判がホテル業界に与える影響はけして大きいとは言えません。ニュースとしてはとても小さいものでしょうが、考えるきっかけくらいにはなったと思います。

2020年1月20日にスーパーホテルユニオンが結成されているようです。おそらく提訴前に慌てて加入したものだと思います。労働組合の団体交渉が労働者に対して誠意の欠片もない企業にどこまで効果的なのか?と個人的には考えてしまいます。


(2020年10月26日追記)
その後、10月6日、スーパーホテル側が反訴しました。
・追い出したのは原告の2人の業務放棄が原因。
・偽装業務委託ということはない。
・記者会見により社会的評価を低下させられたなどとして計約3632万円の賠償を求める。
スラップ反訴と言うのですか?元支配人側に圧力を掛けると同時にホテル側の正当性を世の中にアピールします。
結果、全面対決となりました。


(2022年2月7日追記)
その後、裁判はまだ続いています。次回は、
2022年5月30日 14時00分より
東京地裁510号法廷
です。



ホテルで働く場合は英会話が達者でないと採用されないか?ということについては、こちらのページで詳しく書いています。
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