シェアハウスやネットカフェは旅館業なのか?
宿泊施設と言っても様々な形態や呼び名があります。
普通のホテルや旅館しか利用しない人が、それらの施設を利用しようとした場合は「これってホテルなの?旅館・民宿?それともレンタルルーム?」とちょっと区別がよく分からず疑問に思うことも少なくないかもしれません。
例えばざっと、こんな呼称があるでしょう。
シェアハウス、ネットカフェ、レンタルルーム、ウイークリー・マンスリーマンション、ホステル、ユースホステル、カプセルホテル、ライダーハウス、ミニホテル、アパートメントホテル、ゲストハウス、コンドミニアム、貸別荘、保養所、山小屋、下宿、民泊。
何がどう違うのだかはっきりしないものもありますよね?
実は区別はあいまい
例えば仮に、「レンタルルーム」という名称を使っている宿泊施設があったとします。しかし実は同じ名前でも大きく三種類の違いが存在します。
一つは「旅館業法」の許可を受けて営業しているもの。
二つ目は「風俗営業法」の許可を受けているもの。
三つ目は賃貸契約書を作り、「不動産業」として行っているもの。
二番目については、風俗店とレンタルルームの両方を同時に営業している経営者というのは都市部ではけっこう多いのです。
しかし、現在レンタルルームも時代の変化により単身者の休憩や、女性同士でのロング休憩などの一般のお客様を受け入れる場合も多くなってきました。
許可を受けている先が違うだけであって、宿泊者側にはあまり問題ではないのかもしれません。
三番目は「不動産業」、つまり「賃貸業」として部屋を貸しているというスタンスですから、「賃貸借契約書」の締結という行為が発生します。
ここで厚生労働省の「旅館業法概要」を見てみましょう。旅館業と言われるものにも3種の形態があることが分かります。
(旅館業法改正法 法律第84号 平成29年12月15日公布 平成30年6月15日施行)
1 定義
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされている。旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない。
また、「宿泊料を受けること」が要件となっており、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けない。
なお、宿泊料は名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれる。例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされる。
また…(後略)
2 旅館業の種別
旅館業には旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業の3種がある。
(1) 旅館・ホテル営業
施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
(2) 簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。
(3) 下宿営業
1月以上の期間を単位として宿泊させる営業である。
だいたいは旅館業
絶対ではないという前置きをしつつですが、小さなちょっとはっきりしないような宿泊施設は上記(2)の「簡易宿所営業」である場合がほとんどです。
シェアハウスは旅館業、賃貸業のどちらもあるでしょう。ネットカフェ・マンガ喫茶は風俗営業です。
ネットカフェで寝ている人もいるよね?ナイトパックとかの料金体系もあるし、ぶっちゃけ睡眠をとるために利用してますよね?って皆も思うでしょう。
それは旅館業にならないよう、うまくごまかしているからなのです。
例えば旅館業でないなら、寝具を使用させてはいけません。つまり、ベッドや布団を設置してはいけないので、リクライニングチェアーで横になることになります。
そして、宿泊という言葉は使わないはずです。宿泊パックという料金体系が表示されていたらアウトなのです。
ネットカフェはこのへんを上手い具合にすり抜けているのです。
もし、旅館業の許可を受けてネットカフェを経営しているのなら、何も問題はありません。
それで、ネットカフェ・マンガ喫茶でテレビが見られるようになっている施設はNHK受信料を払わなければいけないのか?という疑問ですが、パソコンだけではなくテレビも見られるということなら受信料は免れないでしょう。ホテルにおいては部屋数分の受信料を払え、という判決が過去に出ていますから、考え方としては同じになるかと思います。
怖いのは、今後NHKはインターネット可能な機器があれば受信料を徴収できる方向にもっていこうとしていることです。そして、ネットカフェや漫画喫茶は現在ここのところが非常にグレーであるようです。つまり、大部屋をパーテーションで区切ってスペースを造っているだけ。大部屋の一部分を貸しているだけのいわばレンタルスペースです。けして個室ではない。という主張です。
確かに天井がないところがほとんどですよね。天井で囲ってしまうと個室になってしまうからでしょう。
民泊が難しい
マンションの空室や民家の一室に旅行者を宿泊させる民泊は扱いが非常に難しいと思います。
2018年6月に住宅宿泊事業法が施行され、民泊を行う場合には
1.旅館業法の許可を得る
2.国家戦略特区法(特区民泊)の認定を受ける
3.住宅宿泊事業法の届出を行う
という3つの方法から選択していました。
民泊を行う場合は3の住宅宿泊事業法の届け出を行うケースが一般的です。ただし年間提供日数が180日以内との制限があることや、家主が不在の場合には、「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務経験」を有している管理者を配置しなければならないといった条件がネックになっていました。
しかし、2023年7月19日に「国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則の一部を改正する省令等」が公布・施行され、管理業者要件が緩和されました。
アフターコロナの訪日外国人のオーバーツーリズムなどを見越してだと思います。
民泊のうち家主が住んでいない「家主不在型」の場合、これまで法律で清掃や苦情に対応するため、物件の管理を事業者に委託することが義務づけられ、管理事業者は「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務」が求められていました。それが今回の法改正で、所定の講習の受講修了者も新たに管理者として認められるようになりました。
具体的には20時間程度の学習や7時間程度の講習を踏まえて修了試験に合格することなどが条件となります。
宿泊者に困ることはあるの?
便利に安く、選択肢が増えるのであれば宿泊するほうにとっては喜ばしいことではあります。私は、宿泊内容や料金に同意していて、本人が納得していればそれで良いとも思います。ただし、ひとつ注意するべきことを確認しておきましょう。
「賃貸借契約」方式で、シェアハウスなどで長期の宿泊する場合、「定期借家契約」を結ぶ場合があります。
通常、アパートは入居者が望めば契約更新出来ます。しかし、「定期借家契約」では宿泊者が更新を希望しても、施設側は拒否出来るということを知っておいて下さい。
また、中途解約出来るか等の説明、契約内容をきちんと確認することです。宿泊者名簿だけチョイチョイと書けば済むホテルとは違うのだということをお忘れなく。
ネットカフェのテレビがグレーゾーンだと述べましたが、ホテルのNHK受信料って部屋数分を払っているという内容のページです。
・ホテルのNHK受信料 - 最高裁判決の影響
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普通のホテルや旅館しか利用しない人が、それらの施設を利用しようとした場合は「これってホテルなの?旅館・民宿?それともレンタルルーム?」とちょっと区別がよく分からず疑問に思うことも少なくないかもしれません。
例えばざっと、こんな呼称があるでしょう。
シェアハウス、ネットカフェ、レンタルルーム、ウイークリー・マンスリーマンション、ホステル、ユースホステル、カプセルホテル、ライダーハウス、ミニホテル、アパートメントホテル、ゲストハウス、コンドミニアム、貸別荘、保養所、山小屋、下宿、民泊。
何がどう違うのだかはっきりしないものもありますよね?
実は区別はあいまい
例えば仮に、「レンタルルーム」という名称を使っている宿泊施設があったとします。しかし実は同じ名前でも大きく三種類の違いが存在します。
一つは「旅館業法」の許可を受けて営業しているもの。
二つ目は「風俗営業法」の許可を受けているもの。
三つ目は賃貸契約書を作り、「不動産業」として行っているもの。
二番目については、風俗店とレンタルルームの両方を同時に営業している経営者というのは都市部ではけっこう多いのです。
しかし、現在レンタルルームも時代の変化により単身者の休憩や、女性同士でのロング休憩などの一般のお客様を受け入れる場合も多くなってきました。
許可を受けている先が違うだけであって、宿泊者側にはあまり問題ではないのかもしれません。
三番目は「不動産業」、つまり「賃貸業」として部屋を貸しているというスタンスですから、「賃貸借契約書」の締結という行為が発生します。
ここで厚生労働省の「旅館業法概要」を見てみましょう。旅館業と言われるものにも3種の形態があることが分かります。
(旅館業法改正法 法律第84号 平成29年12月15日公布 平成30年6月15日施行)
1 定義
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされている。旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない。
また、「宿泊料を受けること」が要件となっており、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けない。
なお、宿泊料は名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれる。例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされる。
また…(後略)
2 旅館業の種別
旅館業には旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業の3種がある。
(1) 旅館・ホテル営業
施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
(2) 簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。
(3) 下宿営業
1月以上の期間を単位として宿泊させる営業である。
だいたいは旅館業
絶対ではないという前置きをしつつですが、小さなちょっとはっきりしないような宿泊施設は上記(2)の「簡易宿所営業」である場合がほとんどです。
シェアハウスは旅館業、賃貸業のどちらもあるでしょう。ネットカフェ・マンガ喫茶は風俗営業です。
ネットカフェで寝ている人もいるよね?ナイトパックとかの料金体系もあるし、ぶっちゃけ睡眠をとるために利用してますよね?って皆も思うでしょう。
それは旅館業にならないよう、うまくごまかしているからなのです。
例えば旅館業でないなら、寝具を使用させてはいけません。つまり、ベッドや布団を設置してはいけないので、リクライニングチェアーで横になることになります。
そして、宿泊という言葉は使わないはずです。宿泊パックという料金体系が表示されていたらアウトなのです。
ネットカフェはこのへんを上手い具合にすり抜けているのです。
もし、旅館業の許可を受けてネットカフェを経営しているのなら、何も問題はありません。
それで、ネットカフェ・マンガ喫茶でテレビが見られるようになっている施設はNHK受信料を払わなければいけないのか?という疑問ですが、パソコンだけではなくテレビも見られるということなら受信料は免れないでしょう。ホテルにおいては部屋数分の受信料を払え、という判決が過去に出ていますから、考え方としては同じになるかと思います。
怖いのは、今後NHKはインターネット可能な機器があれば受信料を徴収できる方向にもっていこうとしていることです。そして、ネットカフェや漫画喫茶は現在ここのところが非常にグレーであるようです。つまり、大部屋をパーテーションで区切ってスペースを造っているだけ。大部屋の一部分を貸しているだけのいわばレンタルスペースです。けして個室ではない。という主張です。
確かに天井がないところがほとんどですよね。天井で囲ってしまうと個室になってしまうからでしょう。
民泊が難しい
マンションの空室や民家の一室に旅行者を宿泊させる民泊は扱いが非常に難しいと思います。
2018年6月に住宅宿泊事業法が施行され、民泊を行う場合には
1.旅館業法の許可を得る
2.国家戦略特区法(特区民泊)の認定を受ける
3.住宅宿泊事業法の届出を行う
という3つの方法から選択していました。
民泊を行う場合は3の住宅宿泊事業法の届け出を行うケースが一般的です。ただし年間提供日数が180日以内との制限があることや、家主が不在の場合には、「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務経験」を有している管理者を配置しなければならないといった条件がネックになっていました。
しかし、2023年7月19日に「国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則の一部を改正する省令等」が公布・施行され、管理業者要件が緩和されました。
アフターコロナの訪日外国人のオーバーツーリズムなどを見越してだと思います。
民泊のうち家主が住んでいない「家主不在型」の場合、これまで法律で清掃や苦情に対応するため、物件の管理を事業者に委託することが義務づけられ、管理事業者は「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務」が求められていました。それが今回の法改正で、所定の講習の受講修了者も新たに管理者として認められるようになりました。
具体的には20時間程度の学習や7時間程度の講習を踏まえて修了試験に合格することなどが条件となります。
宿泊者に困ることはあるの?
便利に安く、選択肢が増えるのであれば宿泊するほうにとっては喜ばしいことではあります。私は、宿泊内容や料金に同意していて、本人が納得していればそれで良いとも思います。ただし、ひとつ注意するべきことを確認しておきましょう。
「賃貸借契約」方式で、シェアハウスなどで長期の宿泊する場合、「定期借家契約」を結ぶ場合があります。
通常、アパートは入居者が望めば契約更新出来ます。しかし、「定期借家契約」では宿泊者が更新を希望しても、施設側は拒否出来るということを知っておいて下さい。
また、中途解約出来るか等の説明、契約内容をきちんと確認することです。宿泊者名簿だけチョイチョイと書けば済むホテルとは違うのだということをお忘れなく。
ネットカフェのテレビがグレーゾーンだと述べましたが、ホテルのNHK受信料って部屋数分を払っているという内容のページです。
・ホテルのNHK受信料 - 最高裁判決の影響
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