宿泊者名簿を書かなければいけないのはなぜ?

ホテルや旅館では、チェックイン時にだいたいどこでも宿泊名簿の記入(記名・記帳)をお願いされると思います。
宿帳・宿泊台帳・宿泊カード・レジ(レジストレーション)カード・受付票とも言われるこの名簿ですが、けっこう名前を書くだけでも面倒くさいですよね。
個人情報の管理が大丈夫か心配だったり、すでに予約サイトで情報を記入しているのだからまた書くことはないのでは?本名でなく偽名を書いたらどうなるのだろう?と、常々この宿泊名簿に疑問・興味をお持ちの方も多いと思います。
宿泊者名簿にはいったいどういう意味・必要性があるのでしょうか?書かなければいけない理由とは?

実はホテルというのは旅館業法という法律に基づいて運営されておりまして、この中に宿泊名簿の記載が義務付けられています。

第六条 『営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。』
(旅館業法改正法 法律第84号 平成29年12月15日公布 平成30年6月15日施行)

『日本国内に住所を有しない外国人である場合には、国籍と旅券番号(パスポートナンバー)を併せて記載することとされています。
宿は、正確さを期する意味で、旅券のコピーを宿泊者名簿とともに保存することで、代替しても差し支えありません。』
(旅館業法施行規則の一部を改正する省令 第7号 平成17年1月24日公布 平成17年4月1日施行)

また名簿は「旅館業における衛生等管理要領」により3年の保管・保存が指導されています。
保管期間はどのくらいか?と問われれば、それは最低3年間ということになります。逆に破棄についての義務や規定はありませんので、ホテルによっては3年ですぐシュレッダーしていく所もあれば、それ以降も何となく保存したままの所もあると思います。

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そもそもの理由は?
宿泊者名簿を書く理由は、集団食中毒や伝染病などが発生した場合に、感染ルートをさかのぼって特定できるようにするという目的からです。
外国人においては、近年日本国内においてもテロ発生に対する脅威が高まってきている為、不特定多数の者が利用するホテル・旅館等においてはその利用者の安全確保が重要になっているという背景があるようです。

しかしこの旅館業法、現在はネット予約が一般的で、その時に顧客情報も入力している場合がほとんどです。ホテル側はその情報を受け取っているはずなのにまた書かすのはどうなのか・・・正直書きたくないよ・・・という意見はよく分かります。けっこう面倒くさいですし、今の時代に合っていないかもしれないとは、正直なところ私も思います。

ホテルによっては厳格に記入を求めないところもあるようです。
私の居たホテルでは短期間中での再来者と常連のお客様に対しては名簿の記入を省略していました。以前に書いたことがあるわけで、データが残っているのが分かっているからです。(本来はその都度記入するのが宿側の正しい姿勢だと思います)
個人情報の取り扱いについても十分に注意していて、名簿は必ず鍵の掛かる場所に保管していました。

宿泊者は、この個人情報については必要以上に神経質にならなくて良いと思います。おそらくほとんどのホテルはきちんと取り扱っていると思います。どうしても宿泊に関することでお客様に連絡を取りたい時、とても重要そうな忘れ物で知らせてあげたほうが良いだろうという時に利用することがありますが、基本は利用しません。
まして信用が第一のサービス業であるホテルが名簿業者に横流ししたり、意味もなく宿泊者情報を開示するということはないでしょう。リスクとリターンが全く釣り合わないからです。


宿泊者が宿泊者名簿の記入を拒否したら?
ホテル側が請求したにもかかわらず、宿泊しようとする者が宿泊者名簿の記入を拒否する場合は、宿泊を断られる可能性が非常に高いと思います。
『旅館業法第5条第2号の「その他の違法行為(中略)をする虞があると認められるとき」に該当するものとして、宿泊を拒否できると解すること。』と、厚生労働省は言っています。
旅館業法や旅館業法施行条例に従えば、都道府県知事・警察官から閲覧要求、開示請求があった場合には、宿は協力しなければなりません。また、全く素性が分からない者が、十分納得できる理由なしに拒否している場合は、そこまでして宿泊させるのは宿にとってリスクが高過ぎます。


宿泊者名簿に嘘(偽名等)の記入をしたら?
短期間(1日以上30日未満)の拘留、または少額の金銭(千円以上1万円未満)の科料の軽犯罪になる可能性があります。けして重い罪ではありませんが、もし仮にこれらの刑で処罰された場合は市町村の犯罪人名簿には掲載されないものの、検察庁の犯歴記録には前科として一生残ることになります。
宿泊者名簿の嘘で罰せられるということはほとんどないと思いますが、他の容疑を追求するための別件逮捕として使われることは可能性として十分考えられます。
けれども、ホテル側は記入された内容が本当であるかはその場では確かめようがありません。住所・電話番号確認をその都度おこなうなんて不可能ですから。せいぜい電話番号の桁が多い・少ない、くらいの明らかな間違いに気付けるだけです。
(2020年、GoToトラベル割引きを受ける宿泊者は、運転免許証やマイナンバーカード等による全員の本人確認が必要です)

宿泊者名簿は伝染病等の感染ルートが特定できるようにという目的があると述べました。
例えば、とても感染力の強いウイルスによる伝染病患者がホテルに泊まっていたことが判明したとしましょう。そしてあなたもたまたま同時にそのホテルに宿泊していたとします。
関係機関は必死に接触者を捜しさらなる感染を食い止めようとします。しかし、あなたは宿泊名簿に偽名と嘘の連絡先を記入していました。そんなことを知る由もないあなたが病院に運び込まれた時には既に意識不明の重体、その間にも多くの接触者が感染。感染者はネズミ算式に増えていき、さらには変異して最強ウィルスが出来上がり人類は滅亡…。
そう、あなたが嘘の記入をしたことで人類が滅亡してしまう可能性があるのです。

まあ、これは理由が分かり易いようちょっと大袈裟な例を挙げてみましたが、こんなことがないように記入を求められているわけです。
だからこそ、宿泊者が不安なく記入できるようホテルは個人情報やプライバシーに関しては厳格に扱うべきと思います。


というわけで、ホテル側から宿泊名簿の記入を求められたら、不満はいろいろあれど素直に書いておくのが良さそうです。

抗議のつもりか個人情報の心配からか、なぐり書きをしてわざと読めないように書く人がいます。また名前を書くときに一瞬躊躇しているように見受けられる人がいます。
ホテルマンは意外とお客様のことを観察しているものです。自分が担当したその日のチェックインのお客様の顔、名前、部屋番号くらいは覚えてしまうスタッフも多いと思います。(規模が大きく部屋数が多いところはさすがに無理でしょうけれど)
例えお客様が悪いことをするつもりは全くなかったとしても、フロントスタッフの頭の片隅にはちょっと気になったこととしてインデックスされる可能性はありますので、それが嫌な方は読めるように書いて、スタッフをあまりいじめないようにしていただきたいと思います。

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代表者のみ?全員?
例えば一部屋に家族・仲間4人の場合、代表者(予約者)のみが記入して、残りの同伴者(同行者)は名前だけ書くというのが一般的な旅館の普通ではないかと思います。
団体の場合は宿泊施設によってケースバイケースだと思います。基本的には名簿は全員記入ですが、現実にはフロント業務がパンクしてしまいますから。
団体の責任者(予約者・幹事)に協力してもらい、事前に名簿を作っておいてもらう方法もありますし、部屋ごとの代表者のみ書いてもらう場合もあるでしょう。責任者1人のみ記入で済ますところももちろんあると思います。
団体の場合は、自分が何号室に泊まっているかすら覚えない人も出てくるので、連泊で戻ってきて「鍵くれ!」って言われても困ったりすることがあるので、ホテルとしては部屋番号と宿泊者名は出来れば把握しておきたいというのはあります。
『ただし、団体で宿泊するとき、代表者又は引率責任者において、当該団体の構成員の氏名、住所、職業等が確実に把握されている場合においては、当該代表者等に係る必要事項のほか、当該団体の名称、宿泊者の男女別人数等その構成を明らかにするための必要な事項が記載されれば、その限りではない。』と「旅館業における衛生等管理要領」の指導がありますから、必ずしも全員分きっちり書かせなければいけないということではありません。


記載項目は?
肝心の名簿への記入項目ですが、旅館業法の「氏名、住所、職業その他」がまた曖昧ですよね。実は名簿への記入は各自治体ごとに求める記載事項が異なるのです。「旅館業法施行条例」やその細則で、都道府県及び市区町村レベルで記入事項が違う場合があるのです。
例えば東京都はこうです。

『旅館業の営業者は宿泊者名簿を備える必要があります。必要な項目は、氏名、住所、職業、性別、年齢、前泊地、行先地、到着日時、出発日時、室名です。
日本国内に住所を持たない外国人宿泊者の場合は、国籍とパスポート番号についても記載が必要です。正確を期すため、パスポートのコピーを名簿に添付し、一緒に保管します。』
(東京都福祉保健局)

旅館業法の「氏名、住所、職業その他」の、その他として「性別、年齢、前泊地、行先地、到着日時、出発日時、室名」も書きなさいと言っているんですね。
前泊地、行先地(後泊地)には自宅、地名、ホテル名などを書きます。例えば宿泊後は家に帰るなら自宅、さらに他の観光地に移動するならその地名か、予約済みならホテル名を記入します。場所が重要なので全国チェーンなら○○ホテル○○店と書いて欲しいわけです。
全国に旅行する機会や出張が多い人は、ホテルや旅館によって書く内容がずいぶん違うんだなあ・・・なんて思った事もあるかもしれません。

ここからは宿側の話になるかもしれませんが、実際問題として、年齢(生年月日)や職業なんて誰も書きたがらないです。特に年齢は女性は嫌がります。それよりも現実的には電話番号(携帯番号)のほうが大事だと私は思います。車両で来ている場合はナンバー。無断駐車や駐車場トラブルで必要になる場合があります。

未記入で返された場合、ホテルによって必ず記入して欲しい所を再度お願いしてみるという感じでしょうか。外国人はさらに、
国籍
パスポートナンバー
ですね。外国人差別と主張しつつ、しぶしぶ書く人もいますが仕方ありません。

例えば宿泊施設を新規で始めるとか、名簿の内容を改良したい場合ですが、その場合のひな型・様式、テンプレートって決まっているのか?というと、そういったことはありません。用紙の大きさとかにも決まりはありません。民泊においても同じです。
ExcelやWordで自分で作っても良いし、データでなくても印字した見本でも印刷屋は受けてくれます。ファイル綴じ用の穴を予め開けて貰うことが出来るところもありますよ。

東京都を含め、例として名簿の様式ファイルをリンクしている都道府県、自治体もあります。そのままでよければダウンロードして使ってもよいと思います。

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未成年者だけが宿泊する場合、親の同意書が必要なホテルは多いです。年齢なんてバレやしないとは言っても、宿泊者名簿には年齢の記入欄がありますから、嘘を書くにしてもきっと罪悪感がありますよね。同意書が必要な理由って知っていますか?
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宿泊名簿の記入拒否は宿泊拒否の事由に該当すると述べましたが、宿という性質上そうそう気軽に宿泊拒否なんてできません。旅館業法で認められている理由がない限り拒否できないのです。
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